ピロリ菌の正式名称はヘリコバクター・ピロリです。ピロリ菌は人間の胃粘膜に生息しており、胃の中に長期にわたって棲みつくことで、萎縮性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃がんなどの疾患を引き起こすとされていますが、その予防としてピロリ菌の除菌療法が有効であることが分かっています。除菌治療を受けることで胃・十二指腸潰瘍の再発防止、胃がんの発生リスクの低減が期待できます。萎縮性胃炎と診断された方、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の治療中・治療経験のある方、早期胃がんに対する内視鏡的治療後の方、胃MALTリンパ腫や特発性血小板減少性紫斑病に罹っている方は、ピロリ菌の感染検査を保険適応で受けることができます。
ピロリ菌は年齢が上がると感染率が高くなります
ピロリ菌の感染の有無は生活環境が大きく影響しています。ピロリ菌は、免疫力の弱い乳幼児期に感染すると言われており、日本で主に感染率が高いのは、幼少期に下水道がまだ定着していなかった50代以降の中高年です。そのため若年層の感染率は低いものの、ゼロになったわけではないので、注意が必要です。ピロリ菌に感染するとその影響は生涯にわたって持続するケースが少なくありません。胃に関するさまざまな病気を未然に防ぐため、40歳を過ぎたら症状の有無にかかわらず、ピロリ菌の感染の有無を確認することをおすすめします。
ピロリ菌の診断方法
ピロリ菌に感染しているかを調べるためには、胃カメラ検査とそれ以外の検査方法があります。
内視鏡検査で行う場合
内視鏡検査では胃の粘膜を確認することができ、萎縮性胃炎があれば、過去どこかの時点でピロリ菌に感染したことがわかります。またその炎症の状態を詳細に観察することで、現在もピロリ菌の感染が続いているのか、既に除菌された状態なのかも判断することができます。
また内視鏡検査では、胃粘膜の一部を採取してピロリ菌への感染の有無を確認することができます。ピロリ菌が作り出す反応(迅速ウレアーゼ試験)や、粘膜の一部を染色して顕微鏡で直接観察(病理組織学的検査)したり、粘膜の一部を培養(培養法)するなどして、ピロリ菌の存在を診断することもできます。
内視鏡以外の検査で行う場合
ピロリ菌に感染すると抗体や抗原が作られます。その反応を利用して、血液や尿を用いて抗体を調べたり(血中・尿中抗体検査)、便を用いて抗原を調べることで、ピロリ菌の存在を診断することができます。
ピロリ菌の除菌治療
ピロリ菌の感染が確認された場合、除菌治療を受けることができます。初めて受ける一次除菌の成功率は約92.6%であり、一次除菌が不成功であった場合も二次除菌で98.0%が成功するとされています。
一次除菌
胃酸の分泌を抑制する薬と2種類の抗生物質の3つを1日朝晩2回、1週間服用します。除菌治療後、約2か月過ぎたら除菌が成功したかを確認します。不成功であった場合には二次除菌が可能です。
二次除菌
二次除菌は抗生物質を変更して、再度1週間服用する治療を行います。二次除菌も不成功であった場合は、投薬内容を変えて三次除菌を受けることが可能ですが、自費診療となります。
除菌治療の副作用
除菌治療の副作用として、主に発熱、下痢、血便、皮膚のかゆみや発疹が起こる場合があります。副作用と思われる症状が見られたときは、副作用と思われる症状が見られたときは、速やかに医師にご相談ください。また、除菌治療終了後に胃もたれや胸やけなどの逆流性食道炎の症状が起こる場合があります。この症状の原因として、ピロリ菌の除菌によって低下していた胃酸の分泌が正常に戻ったことがあげられます。